湊かなえの小説「ユートピア」は、地方の港町を舞台に繰り広げられる心理ミステリーです。

中心となる登場人物はそれぞれに境遇も性格も異なる女性3人。

その3人の視点からストーリーが展開されます。

お互いを信用しているようでそうでもなかったり、自分にないものをうらやんだり、3人はそれぞれの心の中にじめじめしたものを抱えています。

湊かなえの小説は、いつもそういった人間の嫌な部分がとても上手く表現されているように思います。

3人の女性の心理描写を読んでいると自分に近い部分があったり、身近な誰かと重ね合わせたりと共感するところがたくさんあります。

自分にとっては正義と思うことも他の人からは疑わしく見えることだったり、自分にとってはつまらない田舎が他の人からは「ユートピア」に見えたり。

どこまでいっても完全には分かり合えない人間関係は、女性ならではのものなのかもしれません。

また、田舎町にありがちな閉鎖的な空気感もとにかくリアルで、読み進めるごとに嫌な気分になります。

その嫌な気分は読み終わってもスッキリ解消されることはありません。

それでも、自分の中にもある汚さやずるさを突きつけられているようで、怖いもの見たさに読み進めてしまうのです。

また、3人の女性のうち2人の娘がそれぞれに出てくるのですが、その娘の描き方もさすがだなという印象です。

まだ小学生の女の子たちですが、それでもやっぱり女性。

彼女たちの友達付き合いにも何か裏があるのではないか、嘘をついているのではないかと勘ぐりたくなります。

終始ジメジメしたストーリーで、結末もスッキリしませんが、それと裏腹に読んで良かったと思える作品です。