辻村深月の本を紹介するのはとても難しいです。
なぜなら抜群に面白いシーンは往々にしてその話の肝であり、答えであり、壮大なネタバレだからです。この『スロウハイツの神様』もそんなオススメしづらい辻村深月作品のひとつです。

この本の好きなところを挙げるとなるとキリがないのですが、特にという点を挙げるとするなら、それは登場人物がちゃんと生きているというところでしょう。
この物語では、話し手となる主人公がころころと変わっていく。
それは売れっ子脚本家であったり、天才画家であったり、苦労人の漫画家志望であったりするのですが、どの目線からの語りも無理がなく、非常に読みやすいです。
特にキャラクターによって着眼点が違うのが面白く、ついついページをめくるスピードがはやまってしまいます。
才能をもつ者ともたない者のそれぞれの苦悩は必読で、特に手に職をつけている人にとっては心苦しい場面もあるかもしれません。

また、ほとんどの辻村深月作品に見られる「謎」もちゃんと用意されています。
この物語は特にミスリードに引っかかった時の悔しさから、真実を知った時の面白さまでが流れるように存在していて、読後感がとても良いです。
普段サスペンスやミステリーしか読まないという方にもぜひ胸を張っておすすめしたいです。
ここまでのぼんやりとした説明で読みたい!と思ってくれた方がいるかどうかが不安ですが、騙されたと思って一度手にとってみてほしいです。
決して読んで後悔はしないし、欲を言うならぜひ辻村深月ワールドに存分に浸って欲しいと思います。