『フリーター、家を買う』『阪急電車』などの原作でおなじみ、有川浩の中編です。

sideAとsideBに分かれており、二つの物語が入っています。カセットテープのA面・B面のように表裏一体化している物語。どちらも女流作家とその夫の話です。そして、そのどちらかが死ぬ話です。

sideA:

隠れて書き溜めていた小説を見られた、会社の同僚と恋に落ち、彼に勧められて作家への道を歩き出した彼女。いろいろな苦労やトラブルに見舞われながらも、着実にストーリーセラー(物語を売る人)として実績や人気を積み重ねていく。そんな中彼女が病に倒れます。【致死性脳劣化症候群】複雑な思考をすればするほど脳が劣化する病。思考することと引き換えに命を失っていく。

物を考えない。それでもそれでも彼女は書くことをあきらめません。

sideB

がんに侵された夫が、最後の日まで作家である妻を思いやり、二人で残された日々を大切に過ごす話。「こんなこと逆夢にしてやる」神様に喧嘩を売った彼女の血を吐くような願いと怒りがすさまじい。そういう妻を丸ごと包み込み、自分の死後も彼女が問題なく生き続けていけるように、そっとサポートする夫に底知れぬ愛を感じます。

どちらの話も、悲しい。でも気持ちのいい安心感のある終わり方です。