道尾秀介は好きな作家です。「向日葵の咲かない夏」が話題になり、本が売れ始めて以来、ずっと注目し、作品を手に取ってきた作家です。

ミステリーでデビューした作家ですが、最近は人間の機微に触れる優しい小説も発表しています。今回の「鏡の花」もその流れの中の作品です。

「鏡の花」はそれぞれが独立して読むことができる中編5作品を収録している形の章立ての文庫版で読みました。それぞれの登場人物が最終章で集まる形になり、一作としての共通した流れがわかるようになっています。

著者の言葉「生きていてくれてありがとう。その思いを込めて」のとおりに、前の4章は、それぞれの家族が大事な人を亡くしてしまう物語です。

最終章では、その「喪失の物語」が、なかったこととして描かれ、最終章での「喪失の物語」と絡めて、作者の言葉「生きていてくれてありがとう。」が、すべてを締めくくることになります。

初期のミステリー謎解き系の作品からは、ずいぶんと進化した作品になっています。若い人にも、年長者にも、それぞれに「生きていてくれてありがとう」の思いを抱かせる物語になっています。

家族が無事に生きていて当たり前・・という日常に「もし・・誰かが・・亡くなっていたら・・」の怖さを想像させる問題提起の作品です。じっくりと読んでとても良かった本です。