ビタミンFは重松清の短編集で、どの話も30代後半の男性が主人公です。
中年に差し掛かる、さまざまな問題を抱えた少し疲れたお父さんの目線から語りかける短編集です。
全部で8話収録されていますが、どれも大変読みやすく、楽しめる話ばかりです。
その中でも私の心に突き刺さったのは、4番目に収録されている「セっちゃん」というお話です。
この話は、セっちゃんという女の子が毎日陰湿ないじめにあっていると、娘から聞かされていたのですが、実はセっちゃんなどいなくて自分の娘がいじめにあっていたという話です。
自分の娘が今までいじめにあっていたことに父親と母親が気付いてからは、号泣しながら読みました。
父親が身代わり人形を買って帰るシーンは、胸が痛くてたまりません。
最後に、その身代わり人形を連れて、父と母と娘でドライブします。
父は運転しながら後部座席に乗っている娘に励ましの言葉をかけます。
そのさりげない優しい言葉がじんわり沁みました。
どれだけ家族が仲良くても、父親は娘の人生に立ち入ることはできません。
娘が立ち向かい、解決していくしかないのです。
お父さんはいつもお前の味方だよと優しく見守るところが素晴らしかったです。
重松清独特の優しさが体中に染み渡る短編集だと思います。
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